2019年度版キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)を解説
2019年8月15日 カテゴリー: コラム
美容業助成金サポートならお任せ!ベネフィット社会保険労務士法人の櫻井です。
「短時間労働者」という言葉はご存知でしょうか。
勤務時間・勤務日数が常時雇用される労働者の3/4に満たない労働者のことを指します。
短時間労働者はいわゆる正社員と比較しても労働日数や週の労働時間が短いことから、給料や待遇面で大きく差があります。
また社会保険に未加入(一部を除く)のため、病気や老齢になり給料がもらえなくなったときに、給付金・年金等が支給されることはありません。
採用時に短時間労働者としての採用を本人が希望していたのならば良いですが、短時間勤務労働者は前述した理由から、1つの仕事では生活が成り立たないので、アルバイトの掛け持ちや副業をするケースが多々あります。
「いつまで所属するか分からない」、「給料面も大きく差がある」、「社会保険にも未加入」という状態のため、将来への不安も一層強いでしょう。
実は雇用関係助成金の代名詞である「キャリアアップ助成金」には「短時間労働者労働時間延長コース」という短時間勤務のパート・アルバイト従業員の労働時間を延長させ、社会保険適用者にすることで助成金をもらえる制度があります。
同コースはキャリアップ助成金の中で、今年2019年度に支給額が大幅UPされた助成金です。
活用をお考えの事業主様もこの機会に是非申請を検討ください。
1.キャリアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)とは
「キャリアアップ助成金」は、企業内の非正規雇用の労働者について、正社員化や賃金・諸手当等の待遇改善を行い、キャリアアップを促進することを目的とした制度です。
非正規雇用労働者のキャリアアップにより、事業の生産性を高めることが狙いです。
そんなキャリアアップ助成金の1コースである「短時間労働者労働時間延長コース」は、企業内短時間労働者の一週間の所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成金が支給されます。
尚、週の所定労働時間の延長は5時間以上が条件です。
延長時間が5時間未満の場合は、キャリアップ助成金の「賃金規定等改定コース」もしくは「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」を実施し、対象労働者の待遇改善を行なった上で、週の所定労働時間を最低1時間以上延長し、社会保険の被保険者とすることで要件を満たします。
ポイントとしては、「労働者の賃金が減らないようにする」ということです。
有期契約労働者等のキャリアアップが目的なので、短時間労働者が損をしてしまっては問題です。
よって、労働時間が規定の時間以上に延長されない場合は賃金規定等改定コースや選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施して賃金アップを行うのです。
2.どういった労働者が対象となるのか
短時間労働者労働時間延長コースの対象となる労働者は前提として対象の事業主に雇用される「有期契約労働者」等であることが条件です。
また、
- 週の所定労働時間延長を行った日の前日から過去6か月の間、社会保険の適用要件(週の労働時間や月額賃金、勤務期間等の諸条件)を満たしていない
- 週の所定労働時間延長を行った事業所の事業主もしくは取締役と3親等以内の親族でない
- 支給申請日に会社を離職していない
等の条件に加えて、
下記のa、bいずれかに当てはまることが条件です。
- 週の所定労働時間を延長(5時間以上)した日の前日より過去6か月以上有期契約労働者等として継続雇用されている
- 週の所定労働時間を延長(1時間以上5時間未満)した前日より過去6か月以上有期契約労働者等として継続雇用し、延長後の基本給は延長前と比較して下記の通り昇給していること
1時間以上2時間未満:13%以上の昇給
2時間以上3時間未満:8%以上の昇給
3時間以上4時間未満:3%以上の昇給
4時間以上5時間未満:2%以上の昇給
3.事業主の支給要件
前述した様に、同助成金は雇用する有期契約労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険の適用者とすることで、労働者のキャリアップを図ります。
よって、事業主に求められる要件は
- 雇用する有期契約労働者等について週所定労働時間を5時間以上延長、その後に新たな社会保険適用者とする
- 週所定労働時間が5時間未満の場合は、週所定労働時間を1時間以上延長し社会保険に適用させること、また賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースの実施を行うこと
- 週所定労働時間延長後、新しく社会保険の被保険者となった労働者については6か月以上継続雇用し、処遇が適用された給与6か月分を支給すること
- 週所定労働時間延長以降の全期間は当該労働者を雇用保険および社会保険の被保険者として適用する
- 週所定労働時間延長を行う際には、週所定労働時間及び社会保険加入状況を記す雇用契約書等を作成および交付する
となります。
4.支給金額
延長時間と企業規模により支給金額は変動します。
また、1年度につき1事業所当たり支給申請上限が15人までとなっています。
(1)短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し社会保険へ適用した場合
中小企業…22万5,000円<28万4,000円>
大企業…16万9,000円<21万3,000円 >
※<>内は生産性向上案件を満たした場合の金額
(2)週所定労働時間延長と社会保険への適用に加えて、賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施した場合
中小企業
- 1時間以上2時間未満:1人当たり45,000円<57,000円>
- 2時間以上3時間未満:1人当たり90,000円<11万4,000円>
- 3時間以上4時間未満:1人当たり13万5,000円<17万円>
- 4時間以上5時間未満:1人当たり18万円<22万7,000円>
大企業
- 1時間以上2時間未満:34,000円<43,000円>
- 2時間以上3時間未満:68,000円<86,000円>
- 3時間以上4時間未満:10万1,000円<12万8,000円>
- 4時間以上5時間未満:13万5,000円<17万円>
※<>内は生産性向上案件を満たした場合の金額
尚、短時間労働者労働時間延長コースは今年度支給金額が引き上げられています。
5.まとめ
新規の労働者を中途採用する等して一から教育を行うのも良いですが、それなりのコストがかかることと現場負担も多少は増えてしまうことがデメリットとなります。
短時間労働者の労働時間を延長するのであれば、採用にかかるコストは不要ですし、元々その会社で働いている人材なので教育に関する負担も少ないといえるでしょう。
実際の現場の短時間労働者の意見を聞くことも大切ですが、労働時間延長を行うことについてメリットが多いのであれば、同コースを活用して、短時間労働者の労働環境改善を進めましょう。
週の所定労働時間が増えれば、給与もアップするので、従業員のモチベーションを上げることに繋がります。
将来的な事業の成長のためにも、是非検討ください。
キャリアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)やその他の助成金への申請をお考えの方は、ベネフィット社会保険労務士法人までお問合せください。
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