中小企業退職金共済について
2020年1月16日 カテゴリー: コラム
美容業助成金サポートならお任せ!ベネフィット社会保険労務士法人の櫻井です。
優秀な人材の確保や社員定着化のために、給与水準をあげたり、残業時間を減らしたりと雇用環境の改善に努める企業は多いかと思います。
中には「退職金制度」を設けて福利厚生の充実化に努める場合もあるでしょう。
しかし、退職金の支給は一度に多額のキャッシュアウトが必要なため、資金繰りに余裕のない中小企業や零細企業は単独での運用が困難です。
そんなときに活用できるのが、通称「中退共制度」と言われる「中小企業退職金共済制度」です。
今回のコラムでは同制度について詳しく解説いたします。
1.中小企業退職金共済とは
(1)概要
労働者の福祉増進と雇用の安定化および、中小企業の振興と発展を目的として1959年に作られた制度で、運営を独立行政法人勤労者退職金共済機構と中小企業退職金共済事業本部が行なっています。
中小や零細企業は単独で退職金制度を設けることが困難であるため、その背景を考慮して制定された制度と言えます。
(2)仕組み
制度を利用する場合、事業主と中退共本部が契約を締結します。そして、毎月の掛金を事業主が負担し、銀行等の金融機関を通して納付します。
従業員が退職した際には、中退共本部から退職金が直接従業員に給付されます。
(3)加入条件
企業の範囲は、業種によって異なります。例えば、サービス業の場合は常時雇用する従業員が100人以下または資本金・出資金が5,000万円以下となります。
また、従業員は全員加入が原則です。
(短時間労働者や休職期間に入った労働者等一部は加入させる必要はありません。)
(4)掛金
掛金の月額は5,000円から30,000円まで16種類あり、企業側で自由に選択できます。パートタイマーやアルバイトは、3種類の特例掛金月額(2,000円・3,000円・4,000円)から選択することもできます。
尚、加入後に掛金を変更することもできます。その際は「月額変更申込書」を提出します。
2.主なメリット
中小企業退職金共済には、以下のメリットがあります。
- 管理が簡単
- 企業イメージのアップ
- 従業員の定着化、人材確保がしやすい
- 国が掛金の一部を助成
- 法人の場合、掛金を全額損金(非課税)にできる
掛金は口座振替なので手間はかかりません。従業員ごとの納付状況や退職金の試算額も知らせてくれるので退職金の管理がとても簡単です。
そして、新規加入の場合は加入4か月目から12か月間、1人あたり掛金額の1/2まで国から助成を受けることができます(1人あたりの上限5,000円まで)。
さらに、月額掛金を増額した場合、12か月間にわたって増額分の1/3が助成されます(掛金金額18,000円以下に限定)。
また、掛金は法人の場合は損金にすることができます。(個人企業の場合は必要経費)
損金は非課税のため、節税対策になるというわけです。
3.注意すべき点
中小企業退職金共済にはデメリットもあります。
- 掛金は従業員個人に紐づけされる
- 掛金の減額手続きに手間がかかる(従業員全員の同意と厚生労働大臣の認定)
- 貸付制度がない
- 死亡退職金には不十分
掛金は、支払った際に会社から切り離され、従業員個人に紐づけられます。なので、1年半で会社を辞めた従業員には掛金総額を下回る退職金しか支給されませんが、その差額は戻りません。
また、生命保険等の場合は、会社の資金繰りが厳しくなった場合に掛金を一時的に立て替えてくれる貸付制度がありますが、中小企業退職金共済にはその制度がありません。
よって、掛金の支払いが一定期間以上滞ると、解約をされてしまいます。
そして、死亡退職金には向いていないことも注意点です。
中小企業退職金共済は納付期間の長さによって退職金額が決まるので、入社してすぐに労働者が亡くなった場合は、十分な金額を遺族に支給することができません。(掛金月1万円・入社2年で亡くなった場合、24万円程度の支給)
死亡退職金を充実するのなら、保険料が割安な掛け捨ての保険を併用する方が良いでしょう。
4.まとめ
中小企業退職金共済は、国からの助成が受けられることや、節税にも使える等、メリットがある制度です。
ただし、デメリットも存在し、企業によっては相性が分かれます。導入を考える場合は専門家に相談する方が良いでしょう。
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